ヨハネの黙示録とは?
ヨハネの黙示録。
有名な預言書ですね。新約聖書の最後に収録されている27番目の文書です。
ヨハネの黙示録は「黙示文学」になります。
黙示文学とは、神からの啓示や隠された真理を伝える文学をいいます。
しかし実際のところは、人間が想像で書いた文学作品になるようです。そもそも聖書は人間が作った書物。聖霊が作ったというのは後の迷信といいます。
聖書は人間が作った人間臭い書物であることは、バート・D・アーマンをはじめ多くの神学者が述べています。
なお「ヨハネの黙示録」には重大な問題があります。それは後にくわしく書きますが、実のところ「ヨハネの黙示録」は、後世、大量の書き込みと改竄が行われているということです。
そのため「かなり問題のある文書になっている」といいます。
しかしまずは、一般的に知られているアウトラインについて、以下、簡単に紹介してまいります。
ヨハネの黙示録の作者は誰か?
ヨハネの黙示録の作者は「ヨハネ」といいます。
しかし十二使徒のヨハネではなく、別のヨハネであるといいます。
また「ヨハネによる福音書」を書いたヨハネは、「ヨハネによる手紙」の作者でもないといいます。まったく別の人物。
ただしユダヤ人ではないかといいます(名前がヨハネだから)。
ちなみに最初に少し触れましたが、「ヨハネの黙示録」は後に別の人物が西暦150年以降に、悪意に満ちて大量に書き加えて改竄したといいます。このことは田川建三氏が指摘しています。
ヨハネの黙示録はいつ書かれた
ヨハネの黙示録は西暦92年以降に書かれた文書といいます。
というのは、実在したローマ帝国の第11代皇帝である「ドミティアヌス帝」の酷い経済政策が、ヨハネの黙示録に書いてあるからです。
具体的にどういう酷い経済政策かといえば、超インフレ政策にしてしまったということですね。庶民はパンの原材料になる小麦を買えないほど。
実際、ヨハネの黙示録にも「小麦は1コイニクス(約1リットル)で1デナリオン、大麦は2コイニクス(2リットル)で1デナリオン(6-6節)」とあります。
これはまさにドミティアヌス帝による悪政です。
ちなみに1デナリオンは、1日働いて得られる報酬金額。時給1円とすれば1日8千円。
で、このたとえでいえば、
牛乳パック1個分の小麦・・・8千円
牛乳パック2個分の大麦・・・8千円
という超インフレ。なのでこの当時、庶民はパンを食べることだけも大変だったようです。このことが「ヨハネの黙示録」には書いてある(6-6節)ということですね。
で、この悪帝ドミティアヌス帝は、81年~96年の間、在位。「ヨハネの黙示録」もこの辺り以降に書かれたと推測されています。
ヨハネの黙示録の内容とは?
で、ヨハネの黙示録の内容は、実のところ解釈は非常に多くあるといいます。数千から数万に及ぶとか。
というのも記述が曖昧で、どのようにでも解釈できる作品になっているからです。そもそもキリスト教が「解釈の宗教」です。信仰のキモとなる「イエスの死と復活」を旧約聖書の預言を当てはめて「解釈」していますからね。で、解釈はいくらでも出てきます。
話しが脱線しましたが、ヨハネの黙示録のアウトラインをザックリといえば、
- 地中海沿岸にある7つの教会へメッセージ(しっかりと信仰しなさい!と檄を飛ばす)
- 悪政を続けるローマ帝国を批判
- そんなローマ帝国はバビロンのようでもあり今に大制裁を受ける(はずだ)
- ローマ帝国の崩壊は、7つの封印を解くにしたがって展開される
- ローマ帝国が崩壊するにしたがって、悪魔、サタンが跋扈する
- しかしイエスが再臨し、最後の審判が下される
- 悪魔・サタン(ローマ帝国)は滅びる
- メシアを筆頭に新世界が創造され、千年王国が作られる
- イエスを信じた人はハッピー。
という物語です。
最後に大団円を迎える展開です。
黙示録では、イエスは「アルファでありオメガである輝く明けの明星」としてのメシアとして描かれています。
ヨハネの黙示録とは、ローマ帝国を批判しつつも、キリスト教を信じることでイエスが再臨し、最後の審判が下り、新世界創造とともに千年王国が実現するといった、キリスト教教義をベースにしたファンタジー&ハッピーエンドの文学作品になります。未来を示唆した予言ではありません。
ヨハネの黙示録は改竄されていた!
以上が「ヨハネの黙示録」のあらましです。
ところがこの「ヨハネの黙示録」。先に少し触れた通りで、なんと後世に追加・改竄されているといいます。しかも大量に書き加えられていると。で、おどろおどろしい作品になってしまったといいます。
なぬっ!!!
このことは新約聖書学者の田川建三氏による「新約聖書 訳と注 ヨハネの黙示録」にくわしくあります。
有名な「ハルマゲドン」も後世の加筆・改竄だった
ヨハネの黙示録は、具体的にどこが追記・改竄されたのかといえば、こちらの通りになります。
◆追加・改竄の章
1章のほぼすべて、2章、3章、5章、7章1-8、8章、9章、15章、16章、その他の章でもいくつかの言葉
◆オリジナル
4章、6章、10章、11章、12章、13章、14章、17章、18章、19章、20章、21章、22章
で、具体的にどういう内容が追記&改竄されたかといえば、
- 地中海沿岸にある7つの教会宛メッセージ
- 7つの角と7つの目を持った子羊の描写
- 額に神の刻印を押される選ばれたユダヤ人
- 第七の封印と天使のラッパ
- 最後の7つの災い
- 偽預言者
- ハルマゲドン
- 世紀末シーン
- 世界が破壊される禍々しい描写
などなど。
ザックリといえば、もっともよく知られている「破壊と恐怖の描写」のほぼすべて。世の中に多大な影響を及ぼしてきたところばかり。
げげっ!
つまり破壊と恐怖に彩られた予言的な「ヨハネの黙示録」はすべて後世の追記&改竄であると。
驚いたのが有名な「ハルマゲドン」も実は追記&改竄だったということ!
なんとーーー!
以上のことも新約聖書学者の「田川建三」氏が、ご自身で翻訳した「新約聖書 訳と註 ヨハネの黙示録」の中で詳細に説明されています。
ヨハネの黙示録の改竄は何故わかったのか?
ところで、なぜ「ヨハネの黙示録」への書き加え・改竄がわかるかといえば、これもまた田川建三氏の著書に説明があります。ザックリといえば、改竄した人物の文章などには、
- 文体が違い過ぎる
- ギリシア語の使い方が稚拙すぎる
- そもそも文章になっていない
- 改竄者は極端なユダヤ主義者
- 差別が過ぎる、異邦人を見下している
- 品性がない、悪趣味
- おどろおどしい恐怖に満ちている
- サディスティック
こうした特徴があるからだといいます。
ものすごく下手な文章(文章といえない文章)である上、原文の思想や品性などに違いがあり過ぎるから明瞭にわかるといいます。
つまり高校生の作文に、突然、幼稚園の文章が登場する感覚なんだと思います。
そりゃバレると思います。
改竄前の「ヨハネの黙示録」とは?
ちなみに改竄される前の「ヨハネの黙示録」は、田川氏の「新約聖書 本文の訳」に全文掲載されています。
で、こちらを読むとわりとスッキリしています。
キリスト教を信じていると、やがてイエスが再臨する。で、最後の審判を行って、悪(ローマ帝国)を成敗し、新世界創造とともに千年王国が実現するといった、キリスト教の教義を下地にしたファンタジー&ハッピーエンドな物語です。
よく知られているような「おどろおどろしさ」は影を潜め、どっちかといえばファンタジー&ハッピーエンドな文学作品になっています。
オカルト文書とは言い難いですね。
こういう文学作品に対して、何を思ったのか改竄者は、地獄絵図のごとくおどろおどろしい恐怖&不安作品にしてしまった。
ヨハネの黙示録は多大な影響を及ぼしてきた
それにしても「ヨハネの黙示録」は、中世の頃から多大な影響を及ぼした聖書随一の影響力のある文書だといいます。
しかしその文書の半分近くが追加&改竄だった。
で、その追加・改竄された部分こそ、世の中にものすごく悪い影響を及ぼしてきています。具体的な悪影響のことはこちら。
改竄「ヨハネの黙示録」は、世の中に巨大過ぎるマイマスの影響を及ぼしてきましたね。
しかし改竄であることがわかって少し安心したものです。
それにしても「改竄」はキリスト教では十八番ですね。改竄あってのキリスト教。
いろいろと勉強になります。で、こういうビックリなことが次から次へと出てきますので、キリスト教の学習が止められなくなっています。
追記
田川本を読んでいますが、ちょっと表現がキツイところがあります^^;もしかして聖書の影響かななんて思ったりもします.