キリスト教「新約聖書」の内容とは?
「新約聖書」。
新約聖書は367年にアタナシオスが制定したことに始まります。アタナシオスは27の文書を選定。これが現在の「新約聖書」になったといいます。
で、新約聖書の内容は、
- 基本的にパウロ派の教義に基づく文書が収録
- 大きく分けて4部構成(福音書、使徒言行録、書簡、黙示録)
- 合計27本の文書が収録(アタナシオスが27文書を選定)
- 文書の著者も多数。匿名ライター。著者が違うため内容に違いもある(完全にパウロ教に一致していない)
- 6種類のイエス信仰がある(①マルコ、②マタイ、③ルカ、④ヨハネ、⑤パウロ書簡、⑥疑似パウロ書簡・公同書簡、※黙示録)
- 聖書全体の整合性が乏しい
- 後世に追加、改竄された箇所も多い(改竄は数万件に及ぶ:バート・D・アーマン)
こうした特徴があります。
以下、くわしく解説していきます。
なお参考として著書は、バート・D・アーマン「書き換えられた聖書」、田川建三「新約聖書 訳と註」全8巻などです。
聖書とは?
ちなみに「聖書」。
聖書といっても「旧約聖書」と「新約聖書」があります。
- 旧約聖書・・・ユダヤ教のテキスト(ユダヤの民に授けられた律法、歴史、預言を記した聖書)
- 新約聖書・・・パウロ教のテキスト(ユダヤ教にイエスを取り込んで新しく作った聖書)
こんな感じですね。ここでは「聖書」といえば「新約聖書」を指します。
で、新約聖書は、基本的にパウロ派の教義に基づく27文書が収録されています。
新約聖書は4部構成
で、新約聖書には27本の文書が「正典」として掲載されています。後述しますが、367年にアタナシオスが選定したキリスト教関連の文書27選です。ザックリと分類すれば、
- 書簡(21本)・・・信者や教会へ宛てた信仰上の手紙指導。キリスト教教義の原型がわかる。パウロが書いた手紙が最も多い(7本が真筆)。
- 福音書(4本)・・・イエスの言行録。四福音書。4人の筆者がそれぞれの視点から筆記。マルコ福音書が最初に著述。
- 使徒言行録(1本)・・・弟子達の活動録(とはいってもパウロ(ヘレニズム派)とペトロ(原始エルサレム教団)が中心)。
- 黙示録(1本)・・・キリスト教的預言書。地中海沿岸の7つの教会に宛てた文書+ローマ帝国批判+ダニエル書などの旧約聖書の黙示録を土台にした文学作品。正典となっているがAD100年代に猟奇的記述が大量に追加・改竄された問題のある文書。
このようになっています。4部構成ですね。
新約聖書には27文書が収録
で、アタナシオスが選定した27文書が「新約聖書」となっているわけですが、その27文書とは、次の通りです。
①書簡1:パウロ真筆(7本)・・・信仰上の手紙指導。パウロが実際に執筆した手紙。キリスト教の原型がわかる(キリスト教理解には必須の文書)
- テサロニケの信徒への手紙一(AD50年~52年)
- ガラテヤの信徒への手紙(AD53年)
- コリントの信徒への手紙一(AD54年)
- コリントの信徒への手紙二(AD55年~56年)
- ローマの信徒への手紙(AD56年~57年)
- フィリピの信徒への手紙(AD61年)
- フィレモンへの手紙
①書簡2:疑似パウロ作(6本)・・・信仰上の手紙指導。パウロの名前になっているが匿名ライターが書いた手紙。
- コロサイの信徒への手紙(AD60年)
- エフェソの信徒への手紙(AD62年)
- テサロニケの信徒への手紙二
- テモテへの手紙一(AD66年)
- テモテへの手紙二(AD67年)
- テトスへの手紙(AD67年)
②書簡3:公同書簡(8本)・・・信仰上の手紙指導。十二使徒の名前が付いているが匿名ライターが書いた手紙。
- ヤコブの手紙
- ペトロの手紙一
- ペトロの手紙二
- ヨハネの手紙一
- ヨハネの手紙二
- ヨハネの手紙三
- ユダの手紙
- ヘブライ人への手紙(AD95年)
②福音書(4本)・・・イエスの言行録。福音書の書名の人物が書いたのではなく別の匿名ライターが執筆。
- マルコによる福音書(AD65年~70年)
- マタイによる福音書(AD80年~85年)
- ルカによる福音書(AD70年~)
- ヨハネによる福音書(AD85年~90年)
※ちなみにマルコ、マタイ、ルカは似ているため「共観福音書」といっています。しかし似ていても、それぞれ主張や表現は違うため別個に取り扱っていく必要があります。
たまに混在しているケースを見受けられますが、まったく異なる著作物ですね。混ぜるな危険。
③使徒言行録(1本)・・・弟子達の活動録(ルカという匿名の人物が作成)
- 使徒言行録(AD70年~)
④黙示録(1本)・・・文学作品。筆者はヨハネではなく匿名ライター。2世紀には誰かが猟奇的な記述を大量に追記(田川建三氏の研究による)。
- ヨハネの黙示録(AD92年以降、100年代半ばに追記改竄)
このようになっています。
新約聖書の作者は匿名ライターがほとんど
で、新約聖書27文書のうち、作者の素性が分かっているのはパウロが書いた7本だけです。他の20本はなんと匿名ライターによる文書です。
パウロ書簡(真筆)の7文書は、パウロ自身が書いた本物の手紙になります。
けれどもその他の20文書は、十二使徒の名前が付いていても、またパウロの名があっても、どこの誰かわからない匿名ライターが書いたといわれています。
四福音書のマルコ、マタイ、ルカ、ヨハネも、そのような名前の人物がいたわけではないと言われています。匿名ライターによる執筆。
2ちゃんねらーのような匿名作家が書いた文書が新約聖書になります。
で、上記27本ある文書は、6種類のイエス信仰に分類することができます。
新約聖書には6種類のイエス信仰がある
で、新約聖書の27文書を整理すると「6種類のイエス信仰」に整理することができます。
- パウロ書簡(真筆)
- 疑似パウロの手紙&公同書簡
- マルコ福音書
- マタイ福音書
- ルカ福音書&使徒言行録
- ヨハネ福音書
が、6種類のイエス信仰であっても、基本的に「パウロ教」を骨子としています。けれどもそれぞれ違いがあります。
その6種類のイエス信仰は以下のようになります。
1.パウロ書簡(真筆)
パウロ書簡の特徴
- 成立年:AD50年~AD61年頃
- キリスト教の原型がわかる文書
- パウロの真筆文書は7本ある
- イエスへの信仰のみで律法は完全否定(しかしイエスは律法重視を説く)
- 自らの考えを「福音」とする自信にあふれている
- キリスト教の礎となる重要文書
- パウロの名のついた文書が最も多く聖書に掲載
パウロ書簡は、信徒や教会に宛てた信仰上の指導を記した手紙です。パウロが信徒や教会を束ねることに苦労している様子が描かれています。
イエス信仰への理解、信仰に対する姿勢、信徒間のトラブル解決、寄付の呼びかけなどなど多岐にわたっています。
パウロ書簡を読むことで、キリスト教の原型がわかるようになります。
最も早くに成立したパウロ書簡
ちなみに聖書は四福音書から掲載されています。けれどもキリスト教の教義(イエス信仰)の観点からみると「パウロ書簡(真筆)」がもっとも重要になります。
なぜなら「パウロの考え・教え」がキリスト教の原型になっているからです。しかも文書の中で、パウロ書簡が最も早く成立しています(福音書よりも早く成立)。
①テサロニケの信徒への手紙一
②ガラテヤの信徒への手紙
③コリントの信徒への手紙一
④コリントの信徒への手紙二
⑤ローマの信徒への手紙
⑥フィリピの信徒への手紙
⑦フィレモンへの手紙
これらはパウロが執筆した年代順に並べてあります。年代順に読むとパウロの考えの変遷もわかるようになります。
パウロ書簡を読むことでキリスト教が理解できる
パウロは、後に文書化される四福音書にあるイエスの教えをまったくといっていいほど引用することなく、パウロ自身の考えに基づいてキリスト教の教義を構築しています。
で、こうしたキリスト教の教義は、パウロが実際に書いた7本の手紙を読むことで「キリスト教の原型」がわかります。ですので非常に重要な文書になります。
新約聖書も、まず7本の「パウロ書簡」から読むのがおすすめなくらいです。
ちなみに当時、文章を書くことができた人は今でいうインテリになります。パウロも教養人であったということですね。
インテリ&教養人がキリスト教を作り広めたということは、キリスト教の特徴にもなります(知的理解の宗教ということ)
2.疑似パウロの手紙&公同書簡
疑似パウロ書簡&公同書簡の特徴
- 成立年:AD60年~AD67年頃(パウロ真筆よりもやや遅い成立)
- 疑似パウロの文書は6本ある
- 公同書簡は8本
- パウロの教えとは微妙に異なる教えもある
- キリスト教の理解には欠かせないパウロ書簡に準ずる文書
疑似パウロ書簡はパウロの思想を真似て作成したフェイク文書。フェイクであってもパウロの思想に沿った文書もあります。
中にはパウロの考えとは微妙に違う内容もあります。聖書を読む際には注意が必要です。
疑似パウロの手紙
疑似パウロの手紙は6本あります。
①コロサイの信徒への手紙
②エフェソの信徒への手紙
③テサロニケの信徒への手紙二
④テモテへの手紙一
⑤テモテへの手紙二
⑥テトスへの手紙
公同書簡
公同書簡は、十二使徒の名を語った匿名ライターによる文書。全部で8本あります。
①ヤコブの手紙
②ペトロの手紙一
③ペトロの手紙二
④ユダの手紙
⑤ヨハネの手紙一
⑥ヨハネの手紙二
⑦ヨハネの手紙三
⑧ヘブライ人への手紙
これらの文書はパウロの考えとは異なり、パウロ批判をしている文書も入っています。
このことを知らないと、聖書を理解する際に混乱&勘違いしてしまいます。
聖書はまさに複雑怪奇。で、聖書を制定したアタナシオス自身が、実のところ文書の中身をよく理解していなかったことがわかってきます。きちんと精査していなかった可能性が高いですね。
3.マルコ福音書
マルコ福音書の特徴
- 成立年:AD65年~70年(パウロ真筆のほうが成立が早い)
- 最初に登場した福音書。元祖福音書
- 迫害に耐える殉教型イエスを描く
- 神は陰ながら助けるという設定
- イエスは洗礼後、神になる
- 元のマルコ福音書にはイエス復活の記述はない(16章8節で終わっている)
最初に登場した福音書
マルコ福音書は、福音書の中でも最初に登場した福音書になります。他のマタイ、ルカの下地にもなっている重要な福音書ですね。
マルコ福音書のイエスは、
・迫害に耐える殉教型
・イエスは洗礼後、神となる。
として描かれています。
イエスの復活は無かった
ちなみにオリジナルのマルコ福音書にはイエス復活の記述はないといいます。16章8節「恐ろしかったからである」で終わっているといいます。
実際、4世紀に書写された最も古くかつ重要な聖書である「シナイ写本」と「ヴァチカン写本」の両方とも16章8節で終わっています(イエスの復活の話しは載っていない)。また3~4世紀に活躍した聖書注釈家エウセビオスも、弟子宛の手紙の中で「マルコにはイエス復活の記述がない」と書いています。
もっとも最初に作られた福音書に、イエスの復活と昇天の記述がないことは、教義的には重大な問題になりますね。
そのためか、マルコを下地に作成したマタイとルカには、最初から「イエスの復活」は記載されています。
キリスト教を考察する上で、非常に重要な論点となる事実ですね。
4.マタイ福音書
マタイ福音書の特徴
- 成立年:AD80年~85年(マルコ成立後15年後に登場)
- マルコを元に作成(2番目に登場した福音書)
- 信仰者としての生き方を示すイエス
- 律法と普遍的な親切心(隣人愛)で誰でも神の国へ往けるとする
- イエスは生まれながら神という設定
- 旧約聖書からの引用が多い(イエスを新しいメシア像に仕立てる設定)
- イエスの「たとえばなし」を多く掲載
- 律法を守るユダヤ教型(エビオン派に影響)
2番目に登場した福音書
マタイ福音書は、マルコを元に作成しています。
律法を守るユダヤ教型で、律法を守るイエスの言葉を伝えています。
ちなみにパウロは律法を完全否定しています。実はイエスの教えとパウロの教えは正反対になっています。
マタイ福音書は、律法も大事にする昔ながらのユダヤ教によって、イエスを信仰する姿勢がみられます。
なおマタイ福音書は、ユダヤ教の中でイエスを信仰していたペトロやヤコブといった原始エルサレム教団系の福音書になります。また後のエビオン派がマタイ福音書を採用します。
普遍的なイエスの教えが説かれる
マタイ福音書は、キリスト教ドグマの無い普遍的なイエスの教えを説いている箇所があります。
その教えとは、律法を守ることと普遍的な親切心(隣人愛)で誰でも神の国へ往けるとする教えですね。
福音書の中でも珍しくドグマに染まっていない、まさに万人向けの教えになっています。ここは注目に値します。
イエス・キリストの本当の教えとは?隣人愛?実は律法と親切心or万人が神の子
旧約聖書からの引用が多い
マタイ福音書は、旧約聖書からの引用が多く、イエスを新しいメシア像に作り上げようとする努力がみられます。旧約聖書の預言をイエスの言行に細かく当てはめていますね。
またイエスの「たとえばなし」を多く伝承しています。さらにマルコ福音書には無かった「イエス復活」話しを最初から盛り込んでいます。
マタイ福音書は、まさに「ユダヤ教の中でイエスを信仰する」といったニュアンスがあります。実際、パウロの教えと違うところがあります。
5.ルカ福音書&使徒言行録
ルカ福音書の特徴
- 成立年:AD70年以降(共観福音書の中で最も遅い成立)
- マルコを元に作成(3番目に登場した福音書)
- 信仰と他者救済に生きるイエスを描く
- 悔い改めて、神を信じることがメッセージ
- イエスは生まれながら神という設定
- 小説や文学作品風のタッチ
- 作者はパウロと同行していた
- 作者自身は福音書とは言っていない(創作が多い可能性)
悔い改めるがテーマのルカ福音書
ルカ福音書もマルコ福音書を元に作成しています。
ルカ福音書では、自らの罪を悔い改める点にウェイトを置いてイエスを描いています。
愛に富むイエスを描く
また困難に瀕しても他人にやさしいイエスを描いていますね。
イエスが逮捕される際、ペトロが手下の右耳を切り落としたところ、イエスは逮捕間近というのに、その耳をヒーリングで治しています(ルカ22章50節)。
神設定が前倒しになっていく
ルカ福音書では、イエスは生まれながらの神の子という設定です。
ちなみに福音書は、成立する順番にイエスの神の子設定が前倒しになります。
①マルコ(死後)、②マタイ(洗礼後)、③ルカ(生まれながら)、④ヨハネ(宇宙創成の前から)という具合に、イエスの神設定はどんどん遡っています。
これはイエスの神格化の進展を表していますね。
文学作品風のルカ福音書
それとルカ福音書は小説風のタッチで読みやすいのが特徴です。共観福音書の中でもっとも読みやすいと思います。
小説や文学仕立てであるということは創作も入り込んでいる可能性もあると思います。実際、作者自身は福音書とは言っていないと田川建三氏は指摘しています。※田川建三訳「新約聖書 ルカ福音書 訳と註」。
使徒言行録
ルカは、弟子達の活動を記録した「使徒言行録」も作成していますね。
けれどもルカが作成した文書は創作が入っている印象を受けます。派手な奇跡は創作っぽいですね。ある意味、ファンタジー作品となっているようにも思います。物語としては面白いですけどね。
パウロの教えに沿っている
あと作者のルカと思しき人は、パウロと行動を共にしていたため、パウロの教えに沿っています。ただし教理をきちんと理解していません。そのため言葉足らずになっています。パウロ書簡を読み比べると、この辺りのことがよくわかります。
ルカ福音書は、そのライトなタッチが小説風で読みやすいですね。ただ、その軽さが、どこか宣伝書のようにも感じられましょうか。
6.ヨハネ福音書
ヨハネ福音書の特徴
- 成立年:AD85年~90年(最も遅く成立した福音書)
- イエスの神格化が進んだ福音書
- イエスの神性を強烈にアピール(天からの使者、命のパン、私を通らないと神の国に行けない)
- 地上に神の国が到来することは説かない(天国で永遠の命を得る)
- イエスは宇宙開闢以前から神という設定
- 福音書の中でも異色の設定が多い
- 外典のトマス福音書に対抗して作成した文書
イエスの神性を強調する
ヨハネ福音書は独特です。他の福音書とは違って「私は神だ!」「命のパンだ」「私を通らなければ神の国には行けない」など自らの神性をこれでもかというくらい強調している異色の福音書です。
しかし、この異色の福音書が、マルコ、マタイ、ルカ福音書の読解にも影響を及ぼして、キリスト教のカラーを作り上げることになります。
エレーヌ・ペイゲルスは「トマス福音書に対抗して作成した文書」といっています。※禁じられた福音書より
神の国は天国にあると教義変更
またヨハネ福音書は、大幅な教義変更も見られます。それまでは神の国は地上に登場する(イエスの再臨が起きる)という教義だったものです。
ところがヨハネ福音書では、神の国は地上に登場しない。死後、不死の魂となり、天の国でイエスと永遠に暮らすといった教えに変わっています。
奇跡を強調
また他の福音書(共観福音書)では、奇跡は控えめな記述になっています。
が、ヨハネ福音書では「徴(しるし)」といって、信仰への勧誘目的で使われるなど、布教の目的でイエスの奇跡が強調されています。
聖霊の設定も変わる
聖霊も、イエスが天国へ行った後に、イエスとは別の弁護者として地上にやってくるという設定になっています。
イエスの神設定が進む
しかもイエスは、世界が誕生する前から神という設定にもなっています。イエスの神格化もどんどん進み、福音書の中では超人化設定がピークを迎えます。
ヨハネ福音書は他の3つの福音書とは毛色がかなり違います。スピリチュアル色もかなり強くなっています。
後世の追加・改竄もある
けれどもヨハネ福音書は、田川建三氏によれば、後世に追加された文章も多く、創作&フェイク文書にもなっているといいます。追加・改竄の箇所は、
- 1章 10b・13節、14後半18節
- 3章 5節「水」という語)、11・21節の多くの語句、文)、31・36節
- 4章22節
- 5章 14節、28~29節、39節
- 6章 37~140、44~46節、51~58節
- 8章 51節
- 11章 49~52節
- 12章 37~41節、48~50節
- 13章 10~11節、18~20節、28~29第、3ニ~35節
- 14章 3節、1ニ~25節(ただしうち16~19節は不明)、28節
- 15~17章の全体
- 18章 9節、 13節(「その年の大祭司」という句)、14節、32節
- 19章 23b~24節、28節(「書物がなし遂げられるため」という句)、34~37節
- 20章 9節、17節(「私の父はあなた方の父」 以下の旬)、19~23節、24~27節 (うち多くの部分)、30~31節
- 21章 これは、教会的編集者というよりも、それよりもっと後の付加
これだけになるといいます。ヨハネ福音書のかなりの部分が追加・改竄であることがわかります。
くわしいことは田川建三氏の「新約聖書 ヨハネ福音書 訳と註」をお読みいただければわかります。
ヨハネ共同体による異色の福音書
イエスの神化&超人化がますます高まる設定仕様なのがヨハネ福音書。天国が神の国で、ここで永遠の命となることを説く教義に変更
ヨハネ共同体があり、その共同体の人物が、この独特の福音書を書いたといいます。まさにイエスを神の子という視点から書きあげた異色の福音書です。
しかし「トマス福音書」に対抗して書き上げた創作文書といいます。
【番外編】ヨハネの黙示録
これは以前も書いた通りで元々はイエスの再臨をテーマにしたファンタジー小説になっています。しかし後世、誰かがサディスティックな文章を大幅に挿入して猟奇的ホラー小説になってしまったといいます。
このことは田川建三氏が「新約聖書 ヨハネ福音書 訳と註」の中で大変詳しく論じています。
ヨハネ黙示録は問題の多い文書
ヨハネ黙示録は戦争容認の理由にも使われるなど問題のある文書で、ヨハネの黙示録を採用しない教会もあるといいます。しかも猟奇的な記述が多く、読んでいると気分が悪くなってきます。
実質、ほとんど役に立たない文書ですので、過去にも正典から外すように議論されてきたようです。やはり、そもそも聖書に採用したこと自体が誤りだと思います。
ローマ帝国を批判した文学作品
ちなみに未来の予言書と思っている人もいるようですが、それはありませんね。
有名な獣の数字666は皇帝ネロを指しますし、どこまでも当時のローマ帝国を批判し、イエスの再臨を描いた文学作品になります。
666は悪魔の数字ではない!?皇帝ネロを示す?【ヨハネの黙示録】
新約聖書が正典となるまでの歴史
聖書は以上のように6種類のイエス信仰があることを踏まえて、交通整理しながら読んでいくと、混乱も少なく理解もできるようになります。
ところで新約聖書は、どのように制定されていったのか、その歴史についてお話しいたします。
アタナシオスが選定した正典
新約聖書は367年にアタナシオスが制定したことに始まります。アタナシオスは27の文書を選定。これが現在の「新約聖書」になったといいます。
元々、異端とされたマルキオン派が、自らの正典(ルカ福音書とパウロ書簡)を作成していたことから、対抗策として、正統派教会も正典作成に乗り出したという経緯があります。
その第一歩が367年のアタナシオスの27文書選定。
キリスト教関連文書は、聖書収録の27文書以外にも数多くの文書があったといいます。けれども、人間アタナシオスの判断によって、27本の文書が「正典」とされ、新約聖書の原型になったということですね。
人間が選定しています。神や聖霊が選んだわけではありませんし、そもそも聖書には誤謬も多く、書写の間違いも多く、オリジナルの聖書は存在しないと、アーマンも言っていますね。
トリエント公会議で正典を正式決定
その後、27の文書が適切なのかどうかで侃々諤々の論争もあったようです。
猟奇的な表現や差別的表現のある「ヨハネの黙示録」を外すとか、パウロの教えとは異なる「ヤコブの手紙」を外すとかの議論もあって、正典となるまでには時間もかかったようです。
その後、1545年のトリエント公会議において、27の文書が正式に正典となり、現在の新約聖書となったといいます。
新約聖書は整合性が乏しい
新約聖書は、アタナシオスの判断でまとめられたといっても、パウロ派(パウロ信仰グループ、ヘレニズム派)の教義に合致した文書が選定されたということですね。
⇒パウロが考案したイエス信仰とは?
⇒キリスト教とはイエスの「死」「復活」がキモのユダヤ教
しかし当時は、イエスが言ったという福音書や文書が非常に多くありました。
その中から選定したのが27文書。新約聖書は、パウロ信仰グループ(ヘレニズム派)の教理にほぼ沿った文書が選定されています。
しかしながらその27文書も、実際は筆者が数名いて、内容にも違いがあることは、上記でくわしく書いた通りになります。
新約聖書に「6種類のイエス信仰」があることは、なかなか気づかないことです。
そのため新約聖書には統一感がなく、整合性が乏しくなっています。それは6種類のイエス信仰物語が収録されているからですね。
なので新約聖書を十把一絡げに読むのではなく、6種類のイエス物語があることを前提にして読むことが大切です。このように読むと新約聖書を深く理解できるようになります。
ふわっと漠然としたキリスト教の理解ではなく、シャープかつスッキリと理解することができるようになります。
もっと詳細なことはバート・D・アーマンの一連の著書をお読みになってみてください。
まとめ
以上が新約聖書の内容になります。再度整理すると、
- パウロ派(ヘレニズム派)の教義に基づく文書を収録
- 福音書・使徒言行録・書簡・黙示録の4部構成
- アタナシオスが選定した27文書を収録
- 匿名筆者がほとんど
- 6種類のイエス信仰がある(①マルコ、②マタイ、③ルカ、④ヨハネ、⑤パウロ書簡、⑥疑似パウロ書簡・公同書簡、※黙示録)
- 聖書全体の整合性は乏しい
- 後世に追加、改竄された箇所も多い
となります。
こうしたことを踏まえて聖書を読むと迷路や混乱に陥ることなく新約聖書を適切に理解することができるようになると思います。