MMTが日本を救う【森永康平】のレビュー
チビリチビリと読んでいた「MMTが日本を救う」をようやく読み終えまして。その感想です。
著者は森永康平氏。あのエコノミストの森本卓郎氏の息子さんであるとか。本書を発刊できたのは「親の七光り」なのかなあと思いきや、いえいえどうして、よくまとまっています。
MMTは主流派経済学と対立している
本書は、コロナ禍がきっかけで日本でもMMT(現代貨幣理論)に注目が集まっているものの、従来の主流派経済学(新古典派経済学)と真っ向から対立する考えやらがあるため喧々囂々になっているとことを踏まえて著されています。
森永康平さんは中立な視点からMMTについて述べています。で、本書は、
- 安倍内閣が行ってきた財政政策や金融政策についてのおさらい
- コロナ禍で日本の経済はどうなっているのか
- MMTについての解説
- MMTの争点と誤解
- アフターコロナの時代はMMTや新しい経済学が必要
といったことをコンパクトにまとめて述べています。
MMTが日本を救うの中身
本書に記されているコロナに関しては、ネットニュースを見ていたならば既知のことが多いと思います。MMTに関しても三橋貴明さんや藤井聡さんのコンテンツとほとんど同じことを述べていますね。
けれどもコンパクトにまとまっていますので知識の整理に役に立ちます。ただし初めてMMTを知る方にとっては、少々説明不足の感はありましょうか。経済学の基礎知識は欲しいかもしれませんね。
しかしMMTについてザックリと知ることができると思います。
MMTの基礎的な15個の予備知識
ちなみに本書では「基礎的な15個の予備知識」(p138)とあるものの、その15個をきちんと章立てしていないためわかりにくくなっています。しかし、おそらくMMTとは、
- 信用貨幣論に基づく(貨幣は借用書)
- 国が発行する貨幣は租税によって価値を生じる
- スペンディング・ファースト(税金は財源でない)
- 国債発行は金利操作のため
- 統合政府(政府と中央銀行は一体)という考え方
- 機能的財政論(財政政策は雇用や物価に基づく)
- 税金の目的(インフレ抑制、格差是正、悪習慣の抑制)
- 3つの悪税(消費税、法人税、社会保障税)
- 信用創造(貨幣創造、キーストローク・マネー)
- 政府は赤字になる必要がある
- 国債は貨幣(負債)の頂点に君臨する
- 金融政策(金利操作)による景気調整は否定的
- ストック・フロー一貫モデル(誰かの赤字は誰かの黒字)
- 輸出は費用、輸入は便益
- JGP(雇用保障プログラム)※ベーシックインカムに代わる
になるのではないかと思います。
まとめ
中野剛志さんが推薦していましたので、延髄反射的に買いましたが、271ページという少ないボリュームでコンパクトにまとめてあります。またどちらかとえいば中立的な立場なので、MMTに批判的な方でも読むことができるかなあと思います。
「MMTが日本を救う」は、ザックリとMMTについて知りたい方にはおすすめできると思います。