田坂広志「運気を磨く~心を浄化する三つの技法」のレビュー
田坂広志氏の「運気を磨く~心を浄化する三つの技法」を以前読みましてね。で、そのレビューを、これまた1年くらい前に書きましたが、せっかくなので、ブログに投稿しようと思います。
この書は著者の瞑想(禅)体験を元にし、悟りを根底に宿した新しい啓蒙書です。
ありがちな「教え」ではなく、「教え」を超越し「無意識」に働きかけていく瞑想的なアプローチに基づく啓発書。
見方を変えればビジネス系スピ書にもなりますね。
ちなみに著者が禅を行っていることは本書に書いてありません。が、内容や語り口から、長年、禅を行っていると思います。
運気・クリシュナムルティ・悟りに言及
本書は切り口が、科学的な表現や成功を刺激する「運気」という話しから始まっていますが、最後はクリシュナムルティで締めくくるという、どんでん返しといいますか、悟り系が着地点という「ひねり」が効いています。
ドラマティックな構成も上手いですね。
もっともこの書は悟り系というのが途中でわかるんですけどね
「ゼロ・ポイント・フィールド」とは名色分離智
で、著者は「ゼロ・ポイント・フィールド」を提唱しています。
「ゼロ・ポイント・フィールド」とは、ポジティブとネガティブを超越した「究極のポジティブ(二項対立を超えた状態)」といい、本書はここに達するためのアプローチを紹介しています。
この書は平易な言葉で書いてありますが、瞑想などの概念で言いますと、禅定・瞑想によるサンカーラ(カルマ)浄化、認知行動療法、あるがまま(如実知見)の3つを軸にして、真我(ゼロ・ポイント・フィールド)に至らせるという手法です。
で、サブタイにもなっている「心を浄化する三つの技法」とは、まさにこの手法によって得られる産物です。
ちなみに、「ゼロ・ポイント・フィールド」とは、瞑想における「名色分離智」のことでもありますね。著者は、禅定とか、そういう高い境地を想定していますが、実際は、名色分離智です。
名色分離智に達すれば、「ゼロ・ポイント・フィールド」の感覚が生じます。で、自己浄化も急速に始まります。
著者は一瞥体験をしている?
この書は、文体が硬派ですので、女性向けではなく、ビジネス系&男性向けになりそうなのが残念なのですが、著者の体験に基づく見解や洞察に貫かれています。
おそらく著者は禅を長年行っていて、しかも禅定体験か一瞥体験をしたことから真我を感得し、その体感から「ゼロ・ポイント・フィールド」を提唱している可能性もあります。
また自らの体験体感から「運が良くなる」とか「無意識(心)を浄化する」といったことを述べているんじゃないかと思います。
もっとも、「想像」で書いている可能性もあります。
ある程度、頭のよい人になりますと、想像して書くこともできますからね。
実際にお会いしてお話しをしませんと、この辺りのところはわかりにくいですね。文字ならば、それっぽく書けてしまうこともあります。
宗教の言葉を使わないで宗教を説く
この書は瞑想や宗教的な言葉を使わず「運を良くする」などの興味関心を惹く切り口から誘導し説明しています。上手いですね。してやられたりという感じもします。
それと著者の田坂広志氏は「田坂塾」を主催し「21世紀の知性」を持ったリーダーを輩出することを主眼とされているようです。
で、「21世紀の知性」とは悟りによる知性、あるいは悟りの文脈で得られる智慧のことでしょうかね?どうなんでしょう?
それにしてもあえて?瞑想や宗教的な言葉を使わないところに、社会へ適用しようとする著者の工夫と深い慮りを感じさせます。
またこうした深い叡智を目指すことが台頭してきていることに感銘を受けます。インスパイアもされますね。
久しぶりに読んだビジネス系の自己啓発書ですが、まずます良書かもしれません。