WTI原油先物がマイナス価格になった理由
4月20日、ニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI原油先物がマイナス価格になりました。
ちなみにWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)とは、アメリカの西テキサス地方で産出される原油をのことをいいます。WTIはニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で取引をしています。
で、WTI原油先物がマイナス価格となったといっても、5月の先物価格がマイナスです。マイナス37ドル。史上初、先物価格がマイナス価格になったといいます。
ちなみに5月だけがマイナス。6月は下落気味ですが、マイナスになっていません。
では、何故5月の原油価格がマイナスになったのでしょうか?その理由は、
- 原油の需要が減っている
- 原油価格そのものが3月6日以降下落している
- アメリカでは原油の保管場所が一杯で無い
- WTの原油はタンカーで横付けのできないオクラホマ州
この4つであるといわれています。
原油の需要が減っている
まず原油の需要がそのものが減ってきています。これは新型コロナウイウルスの影響です。
新型コロナウイウルスの感染拡大を減らすために、アメリカでもロックダウンを行っています。
そのため経済活動そのものが低迷。したがって原油の需要が減ってきています。これは原油の価格が暴落する要因です。
原油価格そのものが3月6日以降下落している
そもそも2020年3月6日以降、原油価格が下落しています。2020年3月6日のOPECプラスで、コロナの影響を見据えて、石油生産国で協調減産の要請をしています。
ところがロシアとサウジアラビアが反対。両国は増産体制に。このため原油価格が下落しています。
この時にすかさず、アメリカの原油先物取引「WTI先物」も暴落。1バレル60ドルが30ドルに下落しています。
ですので、WTI原油先物価格が暴落する予兆は、既に3月時点であったというわけですね。
アメリカでは原油の保管場所が一杯で無い
で、原油価格が下落している中、原油そのものの需要が減ってきていることは、先述の通りです。
原油の需要が減ってくると、原油が余ります。余剰。しかし余った原油の保管に困ることになります。
実際、アメリカでは原油の保管場所が一杯で、もうありません。アメリカでは原油の貯蔵タンクが一杯になってきています。
WTの原油はタンカーで横付けのできないオクラホマ州
あと、これも原油の保管とも関係しますが、WTIという原油は、オクラホマ州で受け取ります。ここはアメリカのど真ん中です。内陸地。
内陸地だと、タンカーで原油を受け取ることができません。直接、オクラホマ州へ行って原油を受け取るしかありません。
しかし原油の量が膨大です。何千何万バレルがあります。仮にタンクローリーを使っても輸送コストがかかる。
WTI原油はリスクなので売り払ってでも手放したい
以上の複数の理由から、5月のWTI原油先物がマイナス価格になったといわれています。
3月上旬から原油価格は下落傾向なことに加えて、原油をタンカーに配送することもできず、オクラホマ州という地の利の悪さがたたって、WTI原油そのものを保有することがリスクになったというわけですね。
こうした状況では原油の保有そのものがリスクです。なので先物で購入することは避けたいわけですね。お金を払ってでも(売却してでも)原油を誰かに渡したいわけです。
それでマイナス価格になったわけですね。売ってでも原油を手放したい。輸送コストをかけるよりも、売り払ったほうがトク。損切りです。
先物取引ととは何か?
ところで「先物取引」とは何でしょうか?「先物取引」とは、将来、購入できる権利を買うことをいいます。将来、商品を購入するための契約ですね。
購入する日を決めて、いくらの金額で購入するのかを決めて取引すること。これが「先物取引」です。先物取引は、あずき、小麦、原油などが対象になっています。
本来の先物取引
先物取引といえば投機目的に思われていますが、本来の先物取引は、そうではありません。原材料を入手するための「リスクヘッジ」になります。
たとえば1年後に100リットルの石油を入手できる権利を、前もって購入するわけです。こうすると1年後、確実に石油を購入できます。
将来、もし価格が高騰して購入しにくくなるかもしれません。こうした価格の高騰を見越して、先に購入の契約をする。これが本来の先物取引です。リスクヘッジ。
投機目的としての先物取引
しかし先物取引は投機目的にもなっています。原油は要らないけれども「価格が上がりそうだから」という投機目的で先物取引に参入する人がいます。
本当に欲しい人にとっては先物取引はおすすめです。投機目的は、リスクがありますのでおすすめできません。投機目的はリスクが大きいからです。価格が上がるが下がるかは、実際のところわかりません。
本当にあずきなり小麦、原油を必要としている人が行うのが先物ですね。利ざや目当てでの先物取引はリスクの大きい投機になります。
WTIのマイナス価格は続くか?
WTIの原油は需要が無くなってきています。今回は取引の期限が4/21。売買の期限。
で、先述の通りで、5月に原油を受け取っても保管ができません。そもそも保管料が高額。保管できる場所もない。原油そのものが売れない。
なので売りたい人が殺到した。みんなが一斉に投げ売りした。投げ売りで暴落してしまった。手放したいのでマイナス価格になった。
今の状況は、石油を貯蔵できる設備があれば、タダで原油が手に入ります。ところが、これができる人はいません。
今のところ6月の原油はマイナスになっていません。ただし6月の原油は16ドルに下落しています。7月はまだ下がっていない。5月の原油だけがマイナスになっています。
けれども現在の原油の情勢を踏まえると、マイナス価格になることは、しばらく続くようにも思います。