原始キリスト教(初代教会)の歴史【まとめ】
ということでして、正統派を名乗る「原始キリスト教(初代教会)」について書いてきました。で、原始キリスト教(初代教会)に関しては、
- パウロが考案した新興宗教であるということ(パウロ教)
- イエスの教えと矛盾する点がある(イエスは律法を重視した)
- 旧約聖書の預言をイエスに当てはめて解釈
- パウロ教は当時はカルトと言われていた
- ユダヤ教のメシア像に対抗してキリスト教としてのメシア像を新造した
- ローマ帝国に支配された当時のユダヤ社会・地中海沿岸の地域の情勢は知っておく必要がある
- イエス以外で奇跡を起こす人もいた(が、イエスが最も知られた)
- ペトロ達の原始エルサレム教団を吸収した
- 異端(グノーシス主義、マルキオン派、エビオン派、モンタノス派など)の排除と戦い
周辺事情も含めて、こうしたことを押さえて理解すると、原始キリスト教(初代教会)の深いところまで理解できるようになると思います。
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多様化していた原始キリスト教
原始キリスト教は、多くの分派があったことがわかっています。わかっているだけでも、
- 原始エルサレム教団(十二使徒のペトロ、ヤコブ達)・・・AD30年~
- パウロ派(ヘレニズム派/異国にいるユダヤ人達)・・・AD40年?~
- マルコ派(マルコ福音書を作成)・・・AD65年~70年
- トマス派(グノーシス主義)
- ヨハネ共同体(ヨハネ福音書を作成)・・・AD85年~90年
- スピリチュアル集団(幻視・預言[チャネリング]・未来予知・異言・ヒーリング・悪霊払いを行う)
このように多くの分派があり、多様性を帯びていたことがわかっています。
こうした多くの原始キリスト教団の中でも「パウロ派(ヘレニズム派)」が最大勢力となっていきます。
原始エルサレム教団、マルコ派、ヨハネ共同体はパウロ派に吸収されます。
原始キリスト教以外のグノーシス主義は排除
ちなみに、これら原始キリスト教とは別に、グノーシス主義も数多くありました。
たとえば、原始エルサレム教団を精鋭化「エビオン派」。インドのヨーガ的なトマス派。チャネリング&スピリチュアル集団のペンテコステ派。あるいはエッセネ派、ナザレ派、エジプトのテラペウタイ派など。
さまざまなイエス信仰グループがありました。が、これら(グノーシス主義)やスピリチュアル集団は、パウロ達によって陶太・排除されます。
原始キリスト教は内患外憂の戦いが続く
しかしパウロ教(キリスト教)は、内部統制と内部分裂に苦慮します。
また異端とみなしたグノーシス主義などの排除や戦い。
ローマ帝国からの迫害は200年以上に及び、内患外憂の戦いを続けています。
まさに「戦う宗教」。
「人間の頭脳が作った宗教」。
キリスト教がローマ帝国の国教に
しかし313年。ローマ帝国のコンスタンティヌス帝がキリスト教を信仰。
392年にはテオドシウス帝が国教に認定。
ここからキリスト教の破竹の快進撃が始まります。
パウロ教は国教となることで一人勝ち
国教となるや迫害は止み、信者が爆発的に増大。知的階級の信者も増加。キリスト教を擁護する弁護者も増え、パウロ教が最初から正しかったんだと強弁に走ります。
もはや怒濤の快進撃。
一気に地中海沿岸をキリスト教で塗り替えます。
地中海沿岸の多神教世界を駆逐
ちなみに地中海沿岸は、元々多神教が多かった地域です。エジプト神話、ギリシア神話、ローマ神話の伝承がある通りで多神教が盛ん。
しかし創造主を名乗るユダヤの唯一神ヤーウェとイエスを組み込んだ「グローバル全体主義宗教」のキリスト教が、多神教世界を駆逐します。
変容する原始キリスト教
ところで国教となったキリスト教は、その前後から教義にも変化変容が生じています。
イエスの再臨がなかなか来ない
もっとも大きな問題は「イエスの再臨はなかなか来ない」ということだったといいます。
待てど暮らせどイエスの再臨は来ない。
そこでキリスト教では教義の大幅な変化が起こります。
今までは、天の国にいるイエスが、最後の審判を下すために地上に再臨し、世界を一掃して、地上に神の国を建国。
その神の国では、イエスを信じていた者は、不老不死の肉体となって永遠の命を授かり、苦しみも痛みもまったく永遠に生き続けると信じられていました。
死後、審判が下され天国へ
ところが、亡くなった後、各人に審判が下り、イエスを信じていた者は「天国」へ行って不滅の魂を得て、永遠に生き続ける。イエスを信じなかった者は「地獄」へ行く。
このように教義が変わります。
で、「天国」と「地獄」の概念が初めて登場します。
キリスト論・三位一体論の形成
さらに神学も作られていきます。
キリスト論
イエスは完全な人間であり神という「キリスト論」
三位一体論
創造主(父)と子(イエス)と聖霊(イエスが使わした神霊)は同じという「三位一体論」。
これらの神学をを考案します。
けれどもこれらについてイエスは一言もいっていません。パウロも言っていない。
実のところ、これらは、後の人間が「異端対策」の末に考案した教え(コンセプト)だったりします。
こうしてパウロが考案したパウロ教は変容していきます。現在知られているキリスト教は変容したパウロ教だったりします。
16世紀にルターが宗教改革
ちなみに16世紀にルターが宗教改革したことはエポックな出来事でした。
ルターの登場により聖書を絶対視するプロテスタントが登場。
しかしこれは「パウロ教への立ち返り(先祖返り)」だったりします。
プロテスタントでは「5つのソラ」(イエスのみ、信仰のみ、聖書のみ、恩恵のみ、神の栄光のみ)を提唱。
プロテスタントの登場により、
・カトリック
・プロテスタント
の2派にわかれます。
現在のキリスト教
ザックリを説明しましたが、このような歴史と変遷のあるのがキリスト教です。
では実際の信仰はどうかといえば、シンプルにイエスを信仰しているようです。複雑怪奇な教義はほとんど知られていないとか。
で、教会へ行って牧師さんや神父さんのお話を聞いて、賛美歌、聖歌、ゴスペルを歌ったり。コミュニケーションの場。これが実際のところのようです。
キリスト教文化は壮麗
キリスト教は周辺の文化などが素晴らしかったりします。
中世の頃は耽美的な絵画や音楽、叙情詩や物語が創られたり。荘厳なパイプオルガンはいいですね。
キリスト教が関わった文化は美しく華やかです。
聖書を読んでいる人は少ない
で、聖書を完読している人はほとんどいないといいます。
プロテスタント王国のアメリカでも僅少であると。
聖書を読まずに、ほのぼのと信仰している人が多いのがキリスト教。歴史のすさまじさに比べるとどこか平和的。なんだか少し安心します。
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キリスト教は深みに入るとカオス
とはいっても少し専門的になったり深いところに入ると、ヤバめなものがあるといいます。
ドグマ、差別、排他的なのは想像している以上に強そうですね。新興宗教と変わりが無いのもあるとか。ヤバめの新興宗教のような派もあるといいます。
で、現代は現代ならではの玉石混交になっているものの、グノーシス主義的な派はなさそうですね。
キリスト教から離脱した団体は異端だのサタンだのと認定されがちなんですが、もしかするとキリスト教よりも真面目なのかもしれませんね。
キリスト教を学ぶとパラダイムシフトが起きる
で、キリスト教を学ぶとパラダイムシフトが起きます。
キリスト教側で「良い」と言っているものは必ずしも良いとは限らない。このことがわかったのは大きな収穫です。
グノーシス主義は異端と言われていますが、中身を見るとまともです。とゆーか、グノーシス主義のほうが納得するんじゃないの?
グノーシス主義はなぜ異端なのか?正統派教会とは違いすぎる驚きの内容
特にトマス福音書で言っていることは日本人には納得しまくり。「神の国はあなたがたの中にある」はビンゴ。
トマスによる福音書~真我を説くヨーガ的なイエスの教えに驚愕!
「反キリストはどっちなんだよー」と思ったりもします^^;
キリスト教の学びは、国際金融資本とかMMT、お金の真実を知った以上のインパクトがあります。
陰謀論や反ユダヤ主義のルーツもキリスト教。スピリチュアルの源流もキリスト教。新興宗教のひな形もキリスト教にある。
およそ宗教や精神世界に関することのひな形はすべてキリスト教にあるといっても過言ではないほど。
キリスト教を知ると世界がわかります。また巨大なパラダイムシフトが起きます。これは確かです。現代人必須の教養ともいえると、今では思っています。
キリスト教は複雑怪奇
このようにキリスト教は複雑怪奇です。成立の歴史、イエス信仰、聖書などなど。どれを取っても一筋縄ではいきません。
ガッツリと本を読み込んで、ようやくここまで分かった次第。キリスト教は難しい。といいますか、ややこしい。複雑怪奇。
その点、仏教は、複雑に見えてシンプル。文字化されたものや理解・解釈の類は横に追いやられ、体験を重視しているからですね。
仏教は体得体現を重視。言葉化されたものの価値は小さくなり、やがて方便の扱いになります。
しかしキリスト教は、理解・解釈、そうして判断が中心。実践的な「祈り」は、どこか腋に追いやられているかのよう。
けれども「祈り」がキリスト教ではもっとも大事だと思いますね。1ケ月以上にわたって取り組んできましたが、結局「祈りが大事だよね」に落ち着きそう。
複雑怪奇なキリスト教。他にも数多くの発見や気づきもありました。宗教改革とその影響の大きさ、トランプ元大統領を支持している福音派に関すること、現代のキリスト教に関することなどなど興味深い話題もあります。
そんなキリスト教ですが、これからもボチボチと触れ、新しい発見があるかもしれません。が、教義的なことは巨大な迷路であり、マインドが生み出す迷いに感じられますね。
シンプルに「祈り」を中心に据えていくのが、やはりいいんじゃないかと思います。
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