グルーヴ感のある曲にはトリップ感がある

ノリの秘密~グルーヴ感とトリップ感

音楽では「ノリ」が大切です。
「なんかいい感じ♪」といわれる体感ですね。

で、この「ノリの秘密」には2種類あります。
それは、
1.グルーヴ感・・・リズム・演奏が出すノリ
2.トリップ感・・・音色・音像が生み出すノリ

この2つですね。
今日は、音楽の「ノリ」の秘密である「グルーヴ感」と「トリップ感」のお話しです。

グルーヴ感はリズム・演奏によるノリ

60年代や70年代といった、昭和の時代の曲を聞いていると、そこに素晴らしいグルーヴ感があることが分かってきます。

たとえばMarvin Gaye の「What’s Going On」

Marvin Gaye – What’s Going On (Lyric Video)

※引用元:Marvin Gayeオフィシャルチャンネル

マービン・ゲイの「What’s Going On」は有名な曲です。前のめりになって揺れるグルーヴ感は最高です。

本当に気持ちの良いグルーヴ感です。
感極まるものすらあります。

このグルーヴ感を出しているのは、「ジェームス・ジェマーソン」のモータウンベースです。お手本になるベーシストでしょう。

ジェームス・ジェマーソンのベースに加えて、バッキングのさりげないリズムギターもいい味を出しています。

「グルーヴ感は重要」ということは、今までも「当たり前」と思っていましたが、この前、アニソンなどを聞いていて「グルーヴ感の重要性」に改めて気付いたものです。

トリップ感は音色と音像によるノリ

この「グルーヴ感」は変遷といいますか、80年代になってから「新しいグルーヴ感」が登場します。

それが「音色や音像によるグルーヴ感」です。

マービンゲイに見られるように、従来は、リズムと演奏の妙、間合いの取り方などがグルーヴ感を生み出す要因でした。

しかし、80年代以降、テクノミュージックの台頭とともに、「シーケンサー」といわれる自動演奏装置による電子音楽が普及するにつれて、従来のグルーヴ感をそぎ落とした、「音色・音像」による、新しいグルーヴ感が出てきたものです。

これはグルーヴ感というよりも「トリップ感」です。

80年代当初に出てきたテクノは、この「トリップ感」が新鮮で面白かったものです。

これは従来のリズム等だけによるグルーヴ感ではなく、「音色」「音像」といったサウンドエフェクトによる、新しい「グルーヴ感」です。

YMOはトリップ感でノリを出していた

この「音像」「音色」によって、新しいグルーヴ感が得られることにいち早く気付き、研究を深めていったのが、なんと日本の「YMO」だったりします。

分かりやすいのは、この曲かもしれません。

Yellow Magic Orchestra – RYDEEN

※引用元:Sony Music (Japan)公式チャンネル

あまりにも有名な曲なので、紹介するのもはばかるのですが、YMOのライディーンは、まさに「新しいグルーヴ感」の象徴でしょう。

淡々としたドラム。
機械を使って奏でているシーケンス・フレーズやハイハットビート。

従来、こうした正確無比で単調リズムでは、グルーヴ感は出にくいものでした。というか出ません。

YMOはエフェクターでトリップ感を出す

しかし、「RYDEEN」では、立体感のある「うねり」を伴う「エフェクター」で、新しいグルーヴ感を出すことに成功しています。

コーラス、フランジャーという、ステレオ立体感のある「うねり」「ゆらぎ」です。この「ゆら〜」っと揺れる音像や音色のゆらぎが「トリップ感」を生み出します。

この「ゆらぎ」の中を泳ぐかのように、あるいは、馬が疾走するかのように16分音符のシーケンスフレーズが鳴り響きます。

しかもバックングのコード音にも「ゆらぎ」のあるエフェクターがかかっていて、というかほぼ全ての音に「ゆらぎ」のあるエフェクト処理が施されていて、曲全体が、「ゆらぎ」によるグルーヴ感(トリップ感)を生み出しています。

エフェクターでノリを出す

この手法は全く新しいグルーヴ感を生み出す方法でした。

これらが強烈なグルーヴ感を生み出し、中毒性を帯びるくらいで、こうしたトリップ感のあるサウンドにハマる人も多かったものです。

YMOは、当時、猫も杓子もといわんばかりに大ヒットしたのですが、その秘密とは、「音色・音像を使った新しいグルーヴ感」にあったからと分析しています。

実際、ライディーンにかかっているエフェクトを外すと、どこか???となって聞こえます。

はっきり言えば、ダサい^^;
非常に臭いメロディーになっています。
とてもでは、恥ずかしくて聞けたものではなかったりします。

原曲が良く聞こえるのは、メロディとかではないんですね。

アレンジの構築がこれまた素晴らしく巧いというのもあるのですが、モジュレーション系の「エフェクト処理」をガンガンにかけて、グルーヴ感を出しているからこそ、「聴けるサウンド」に変身しているわけなんですね。

ここに気付かずにカバーなんかすると大失敗します。そんな失敗作な「RYDEEN」カバー曲は、YouTubeで検索するとたくさん出てきます。

「音色・音像によるグルーヴ感」が効いていることを知りませんと、ダサくなってしまう格好の事例です。

ということで、YMOサウンドは、やがて「心地良いサウンド」として無意識のうちに共有され、80年代以降は、エフェクターを多用した立体感サウンド、「トリップ感」が広まっていきます。

トリップ感で音楽を作り始めた90年代

しかし90年代以降、この手法が広く普及し一般化していくにつれて、次第に退屈さを感じるようにもなったものです。

この原因は、90年代以降に流行った「リアルな音」の普及です。

別段、リアルな音が悪いわけではなく、グルーヴ感の出し方にミスマッチが起きていたということです。

80年代は、シンセサイザーにエフェクトをかける人工的なサウンドが多く、このため「音像」「音色」でトリップ感を出すことができたのですが、90年代から流行った「リアルな音」のシュミレートでは、グルーヴ感がうまく出てこなかったものです。

どこか淡泊でチープで、色あせた感じを受けたものです。
これは、「生楽器の音」を、シーケンサーで演奏することから生じていました。サウンド的には「生楽器を演奏」しているかのようなのですが、ノリが今一つ。

「なんかおかしい」と思いながらも、80年代の手法で作品を作り、さまよえるような現象が見られるようになったものです。

どうしてそうなったのかは、答えは簡単で、生楽器は、所詮「生楽器」ですので、シンセサイザーのようなエフェクト効果による「音像」「音色」的なトリップ感は効果が期待できず、昔ながらのリズムや演奏の妙によるグルーヴ感が
必要だったからです。

生楽器はトリップ感が期待できない

生楽器の場合、サウンドによる「グルーヴ感(トリップ感)」ではなく、生楽器本来の「グルーヴ感」が必要になってくるわけですね。必要といいますか、それが聴覚上、自然だったりします。

生楽器の場合は、「リズムや演奏」による、従来の「グルーヴ感」のほうが気持ち良いですし、無意識のうちに、これを求めてしまいます。

しかし、シーケンサーで音楽を作ることが一般化してしまうと、リズムや演奏による「グルーヴ感」を失ったまま、

といいますか、忘れられてしまい、80年代の手法で、音楽のクリエイトが進んでいきます。

ですので90年代以降、今一つな音楽が目立つようになって、現代にも至っています。

生楽器をシュミレートした音を使っている場合、打ち込み(シーケンサー)で演奏させてしまうと、たとえ良い曲であっても、ノリやグルーヴ感が今一つになってしまいます。

こうした違和感は、「生楽器本来のリズムや演奏によるグルーヴ感」を再現していないからだと思っています。一つ事例を上げると、PIZZICATO FIVEの「It’s a Beautiful Day」

PIZZICATO FIVE / イッツ・ア・ビューティフル・デイ

※引用元: PIZZICATO FIVE Official

ピッチカート・ファイブのこの曲は、曲自体は大変良いんですね。ですが、マービンゲイの曲とは違って、今一つグルーヴ感が出ていないような気がします。

動画では、ベースを演奏しているかのように見えますが、レコーディングでは、たぶん打ち込みだと思います。今ひとつノリが出ていないような。

グルーヴ感とトリップ感の使い分け

最近の曲でも、こうした「グルーヴ感の損失」を感じます。

たとえばAKB48の曲でも、サウンド的には80年代であっても、何かノリがおかしいというのがあります。

今まで漠然としていたのですが、これは「グルーヴ感が足りない」からではないかと思っています。

現在では、リアルな楽器なのか、それともシンセによる音なのか、もう分かりません。

生楽器の場合は、「リズムや演奏によるノリ、グルーヴ感」が自然に感じられて、この要素が重要なことに改めて気付いたものです。

リアルな楽器を電子楽器でシュミレートするなら、人間の演奏形態に限りなく近くしなければならないのではないかと思いますね。昭和のアニソンやヒーローものを聞いて、そう思ったりもします。

冨田ラボのグルーヴ感は素晴らしい

しかし、今ではDTMを使いこなしながらも、グルーヴ感を見事に再現しているミュージシャンもいます。

冨田ラボ – ずっと読みかけの夏 feat. CHEMISTRY

※引用元:Sony Music (Japan)

「冨田ラボ」こと冨田恵一さん。
音の並びの一つ一つに神経が行き届いています。

これは生演奏したものを、デジタルで加工して手を加えていきます。いかにして気持ちよく聴いてもらえるか、そのグルーヴ感を大変意識して作り込んでいます。

すごい職人的な作り込みです。
体感覚のいい、見事なグルーヴ感が出ています。

とても気持ちいいです。
緻密に設計された音楽ですね。

バイノーラルミュージックヘミシンクのトリップ感

ところで、エフェクターを多用した「トリップ感」のあるサウンドは、立体サウンドにもなって進化していきます。

この流れは現在、バイノーラルミュージックヘミシンクとしてスピリチュアルの世界でも使用されています。

これらの秘密は、実は「サウンドによるトリップ感」だったりします。

歌って踊ってハイになって恍惚になることを、サウンドによるトリップ感で狙っています。それこそ「トリップ感覚」を生じる人もいるようです。

この辺りの音楽は、「リズムや演奏、間の取り方」によるグルーヴ感は一切ありません。

といいますか、ドラムやベースで奏でるリズムがありません。「音色」「音像」といった、「ゆらぎ」サウンドによる「トリップ感」の最先端でしょう。

第三のグルーヴ感はビジュアル・グルーヴ

現代では、グルーヴ感とトリップ感を使い分けたり、巧みに共存させるのが良いのかもしれません。

とまあ、グルーヴ感とトリップ感について考察してみましたが、整理しますと、

グルーヴ感・・・リズム、演奏、間の取り方などによるノリ
トリップ感・・・音色、音像といったサウンドエフェクトによるノリ

ということになります。

で、今後は「第三のグルーヴ感」が登場すると考えています。それは「視覚・ビジュアル」を通して得られる「グルーヴ感」です。「ビジュアル・グルーヴ」といいましょうか。

3D映像なんか、リアリティがありますが、こうした映像とシンクロさせて、グルーヴ感やトリップ感をいっそう深めて幻惑な空間を体験できるようになるのではないかと思います。

って、これは魔境みたいなものですね。
ええ、実際、バイノーラルミュージックでも魔境を体験できます。これにビジュアルが組み込まれますので、幻惑感はさらにハイパーになると予測しています。

洗脳効果半端ないと思いますので、悪用厳禁ですね^^;

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です