秋野不矩美術館~浜松市天竜区二俣にある美術館
さて、この前の日曜日に、浜松市天竜区二俣にある秋野不矩(あきのふく)美術館に行ってきましたね。
実は、この美術館に行ったのは今回が初めて。存在は昔から知っていました。
が、「大したことないんじゃないか」とタカをくくっていましてね。なので行くことは無かったものです。
ところが実際に行ってみると、それがどっこい。素晴らしい。
◎秋野不矩美術館/浜松市
https://www.akinofuku-museum.jp/
ちょうど「オリッサの寺院」という巨大絵が展示してありましてね。これが、1998年の90才の時に描いているんですね。
◎インド情景、雄大に 後期展へ搬入作業 浜松・秋野不矩美術館
http://www.at-s.com/news/article/culture/shizuoka/573896.html
この他にも、
「海辺のコッテージ」・・・1984年、76才
「ウダヤギリ僧房Ⅰ」・・・1992年、84才
「ウダヤギリ僧房Ⅱ」・・・1992年、84才
「九曜星」・・・1994年、86才
「石獅子(アンコール)」・・・1996年、88才
「雨雲」・・・2000年、92才
などが展示してあります。
【秋野不矩 絵画に関する参考サイト】
海辺のコッテージ
ウダヤギリ僧房Ⅰ
ウダヤギリ僧房Ⅱ
オリッサの寺院
廃墟Ⅱ
砂漠の街
廻廊の壁画
秋野不矩(ふく)、天竜区二俣生まれの女性
で、秋野不矩さんは、本名は「秋野ふく」さん。
女性です。
http://www.tenshoudo.com/akino-fuku.html
えええ!女性だったんですかあ!?
というのが、まず驚き^^;
てっきり男性(野郎)かと思っていたのですが、そうじゃあなかったんですね。
たぶん、秋野不矩さんを「男(メェン)」と思っている人がほとんどだと思います。が、「女性」と知ると、驚きに早変わりするんですね。
秋野不矩の生い立ちと経歴
秋野不矩さんは、
1908年(明治41年)生まれ。
天竜市二俣の生まれです。
今の天竜区二俣ですね。
神主の家に生まれています。
ご実家は神社ですね。
天竜区二俣にある神社は少なく、
「旭ヶ丘神社」など限られています。
ご実家はどこの神社なのでしょうか。
明治の頃は神仏分離令により、
お寺や神社は大打撃を受けていますからね。
社領も分割されたり、没収されたりして、
その権限が弱体化しはじめた頃です。
秋野さんは、女学校に通い、
早くから絵画の勉強をしているようですね。
元々、裕福な家に
生まれ育った感じもします。
この当時、女学校へ行って、
絵画を学ぶことができたのは、
それ相応の家だったということですね。
で、卒業後、学校の先生になっています。
が、19才の年に、画家に転身。
で、22才のときに、第11回帝展で初入選。
31才のときに、個展を開催し、
画家として本格スタートってところでしょうか。
この頃は、日本画を描いていた様子です。
で、40才の年に、仲間ららとともに
創造美術を始めています。
この時代が、現代絵画の時代なのでしょう。
が、50才の年に離婚。
その後54才の年に、インドへ渡航。
インドの大学に客員教授となっています。
晩年はインドをモチーフにした
絵画を描き続けます。
亡くなる直前まで描き続けています。
93才(2001年)、京都市で逝去。
◎秋野不矩のプロフィール 秋野不矩の公式WEBサイト
http://akinofuku.jp/profile.html
秋野不矩さんの作風は3つの時期に分けられる~日本画、創造美術、インド絵画
ざっと駆け足で、秋野不矩さんの
経歴をご紹介しました。
秋野さんは、画家としての経歴は長いですね。
若い頃から日本画を描いています。
で、大きく分けて3つの時代になります。
1.日本画時代(20才~39才)・・・日本画の手法で人物を描く時代
2.創造美術時代(40才~53才)・・・現代絵画の手法で人物を描く時代
3.インドへ渡航時代(54才以降)・・・54才からインドの建築物を中心に描く時代
で、秋野不矩さんといえば、
インド渡航時代に描いた作品が代表作ですね。
で、54才以降、画風がガラリと変わります。
こうした方をインド占星術で見たくなりますね^^;
人生のある時期を境にして
ガラリと変わってしまうのは何故なのか。
そういう現象と、インド占星術が示す兆候とは、
奇妙にも一致することが多かったりします。
離婚してから作風が神々しくなった秋野不矩さんの絵画
で、50才くらいで、秋野不矩さんは
離婚しています。
1958年。
昭和33年です。
で、離婚を境にして、画風が激変。
インドの建築物を中心に描くようになります。
で、それが光を放っているんですね。
70才を過ぎてからの最晩年の作品に、
神々しさが顕著になります。
しかしこれは「印刷物」ではわかりません。
わからない。
まったく伝わりません。
実物を見て初めて、その光がわかります。
たとえば、今、展示中の
「オリッサの寺院」「ウダヤギリ僧房」。
これらは、それぞれ90才、84才のときの
作品です。
⇒オリッサの寺院
⇒ウダヤギリ僧房Ⅰ
⇒ウダヤギリ僧房Ⅱ
キャンバスや顔料の持つ
輝きもあるんじゃないかと思いますが、
全体的に神々しい光を放っています。
この光彩が素晴らしいんです。
当時の秋野不矩さんの心の状態が、
そのまま描かれ
ているんじゃないかと思います。
ただ印刷されたもの、ネットで見る絵画では、
これがわかりません。
実物を見なければ、その光がわかりません。
秋野不矩さんの晩年は多幸感に包まれる百寿者の領域か?
年齢も100才近くで、いわゆる「百寿者」
になっていたんじゃないかと思います。
百寿者とは、100才近くになると
多幸感に包まれ、あらゆることが幸せに
感じるようになる年齢と、
そのご老人たちをいいます。
“百寿者” 知られざる世界 ~幸せな長生きのすすめ~ – NHK クローズアップ現代+
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3565/index.html
おそらく秋野さんも、多幸感に包まれる日々を
過ごしていたんじゃないかと推察します。
で、その多幸感を、インドの建築物を通して描き、
建築物を通して、天上界を
感じたんじゃないかと思うんですね。
ええ、天界です。
神々の世界。
秋野不矩さんの晩年の作風~輝く黄色と青色が描く天上界の神々しさ
秋野さんの晩年の絵画は、黄色系や青色系の
色を中心にして描かれています。
今展示している
・オリッサの寺院(90才)
・ウダヤギリ僧房(84才)
・海辺のコッテージ(76才)
も晩年お作品で、すべて黄色系の
顔料で描かれています。
で、その黄色も、「黄金色(こがねいろ)」の光を
放っているのが特徴です。
黄色なのですが、金色に感じられるわけですね。
で、その黄金色の黄色を、
建築物を通して表現しています。
その光は、高貴な精神や神々ですね。
多幸感と感謝にあふれています。
秋野さんは、自らの内に感じる幸福感を通して、
高貴な光、神々のオーラを、
描こうとしたんじゃないかと思います。
インドではありきたりの見慣れた光景。
それを切り取って描きながらも、
そこに崇高で輝く精神と、
天上界のエネルギーを
黄金色で表現したんじゃないかと思います。
こうした神々しい光は、
70才以降の晩年期に描かれた作品に
多く見いだせます。
秋野さんの作品は、構図やデッサンそのものは、
ありきたりの風景です。
なんら変哲もありません。
パっと見ただけでは、ありふれた絵。
しかし、その色彩が織りなす立体感と輝きが、
高次元の精神性を表しているんですね。
神々の息吹。
天上界の輝き。
パっと見た目には地味目な絵画に映ります。
が、立体的で、光を放っているんですね。
パっと見ただけでわかる人と、わからない人が、
二分されるんじゃないかと思います。
スピリチュアルな絵画ですね。
ある種のセンスがありませんと、
秋野不矩さんの絵画は
わからないかもしれません。
海辺のコッテージは海辺を描きつつも天上界と雲海を描く作品
たとえば、今、秋野不矩美術館の廊下に
展示してある絵画。
「海辺のコッテージ」。
これは、1984年、76才のときの作品です。
⇒海辺のコッテージ
この絵画は、柱の向こうに砂浜と海が
描かれているんですね。
見た目は平凡な絵画です。
構図もありふれています。
ところが、その砂浜は「金色の雲海」であって、
天上界から見ている光景に感じられるわけです。
砂浜が雲海のよう。
光輝いている。
砂浜に見せて、黄金色に輝く雲海。
秋野不矩さんの創作メモとか、
そういうのは全く見ていませんが、
絵画を見ていると、どうも天上界、
崇高なる高貴な精神を
表現していたとしか思えないんですね。
ネットでは数少ない秋野不矩さんの作品と情報
そんなわけでして、実物を見ないと、
その特徴がわかりにくいのが、
秋野不矩さんの作品。
秋野不矩さんの作品は、
ネットにあまりありません。
なので、紹介しにくいんですね^^;
ネットには情報が少ないのですが、
こちらのブログには、
よさげな作品やエピソードが紹介されています。
◎SOUND MIK:秋野不矩美術館
◎秋野不矩の絵画作品一覧と所蔵美術館
◎秋野不矩美術館 – 詳細表示 – Vagabond美術館
◎ギャラリー 秋野不矩の公式WEBサイト
◎不矩を語る 秋野不矩の公式WEBサイト
【秋野不矩 絵画に関する参考サイト】
海辺のコッテージ
ウダヤギリ僧房Ⅰ
ウダヤギリ僧房Ⅱ
オリッサの寺院
廃墟Ⅱ
砂漠の街
廻廊の壁画
秋野不矩さんは、その幸福感に包まれる
内面性を通して、光輝く黄色と青色で神々しい
高次元の精神を表現した、
控えめな日本画家じゃないかと思います。
スピリチュアル的にもインスパイアされる作風です。
てなわけでして、「秋野不矩美術館」へ
初めて行って、作品を堪能したものです。